2024年4月11日
市場を創る -解題 SBI Research Review vol.5-
『市場を創る』というマクミラン教授の書籍がある。市場はいかにして生まれ、社会経済を豊かにしてきたかを経済学の視点から解説した名著である。市場の制度やメカニズムには自然発生した要素もあれば、意図をもって設計され改善を重ねてきた要素もある。近年では応用ミクロ経済学の一分野であるメカニズムデザインが様々な社会制度設計において注目されるようになり、オークション理論とあわせて市場の設計にも積極的に活用されている。
本号は、金融市場や金融システム、通貨システム、決済システムがどのように形成されてきたか、そして今、新たに作られようとしているかに焦点を当てた4つの論文を掲載している。金融ビジネスの現場では、金融制度やインフラ、市場構造を所与のものとして捉え、そうした金融の常識のもとでビジネス戦略や業務改善を考えがちである。しかし、歴史を振り返ると、金融市場、金融商品、金融システム、通貨システム、これらを支えるインフラ(法・情報技術・会計・慣習・文化)は、時代とともに変遷しており、安定期や転換期を繰り返し迎えている。
社会のデジタル化の加速が、金融サービスや金融産業構造にも新たな変化をもたらしつつある。前号掲載の鎮目論文が解説しているように、江戸期に形成された分権型の通貨システムにおいては個別商品のサプライチェーンが発展するなかで、単位すら異なる様々な通貨が発行されていた。そして明治初期には、近代国家建設の大きなうねりの中で中央集権的に統合されるという転換期を迎えた。金融機関や取引・決済機関、中央銀行等によって構成される現在の金融システムは、大きく捉えればその延長線上に発展してきたといえよう。
しかし、エコシステムプレーヤーなど非金融機関の金融参入が相次ぎ、情報通信技術革新によって新たな金融サービスや金融インフラの創造が活発化しており、再び大きな変革の時期が訪れようとしている。本稿掲載の論文は、そうした変革の時代の最先端動向を知り、金融の未来を考える手がかりとなるものを提供している。
01.副島論文「金融システムの未来像を探る中央銀行の挑戦」
日本でのCBDCを巡る議論はリテール決済が中心となっている。一方、主要先進国ではホールセールCBDCの可能性に大きな注目が集まっている。特に、民間金融機関や IT 企業は、分散型台帳技術を活用した新しい金融システムと大きなシナジー効果を持つホールセールCBDCの登場に期待を寄せている。その議論の中核にあるのは、証券決済とクロスボーダー資金決済における新しい中央銀行マネーの設計や機能検討であり、取引市場と決済システムの一体設計という新しい金融システムのデザイン方法であり、複数のブロックチェーンインフラがクロスチェーン技術によって連動もしくは統合的に機能する新しい仕組みの検討である。
欧米において1990年代末に始まった証券インフラの産業構造変化では、起点となったのはECN/ATSといった取引所における新プレーヤーの参入であった。これが清算機関、中央保管振替機関(CSD)の産業構造変化に国境を越えて飛び火していった。一方、近年の新しい動きは分散型台帳技術、すなわちマネーや証券の台帳管理技術がイノベーションの起点になり、DeFiという取引市場の新技術の応用や清算機関の役割の再検討など、下流から上流に逆流する展開となっている。ホールセールCBDCや伝統的な中央銀行マネーの新しい用途も、こうした文脈のなかで検討されている。
しかし、日本においては一部の実務家・専門家の間を除き、こうした世界の新潮流は殆ど知られていない。副島論文は、世界の中央銀行が分散型台帳技術の発展をどのように受け止め、次世代の金融システム像を探る挑戦を続けているか、その時間展開を追いながら全体展望を試みている。また、民間金融機関やIT企業のコンソーシアムにおいても、伝統的な中央銀行マネーの競争相手になるような決済サービスの創出が試みられており、これはハイエクが通貨発行自由化論で論じたような通貨間の競争(同じ通貨単位内での競争)という視点でとらえられると指摘している。通貨を発行するのは国家だけではない。預金や電子マネー、ステーブルコインのように民間企業もマネーを発行する。どのような用途のマネーを誰が発行したほうがよいのかは難しい問いであり、かつ通貨価値の安定や金融システムの効率性・安定性と関係する経済社会インフラ設計上の重要な問いである。
こうした問いを考える材料として、同論文は、決済システムの制度設計における重要な要素の解説も試みている。例えば、決済期間の選択やネット決済・グロス決済の選択、リアルタイム決済と時点決済の選択などであり、これらが様々に組み合わせ可能な独立した要素であることを強調している。また、階層構造ほかネットワーク・トポロジーを巡る考察が、決済システムの効率性の面でもリスクマネジメントの面でも重要であることを先行研究を引きながら解説している。クロスボーダー資金決済のインフラ設計においても、こうしたトポロジーの理解が鍵になる点を指摘しつつ、世界各地で複数の中央銀行が検証実験を進めているCBDCのクロスボーダー決済活用事例を紹介している。
論文では、決済システム・マネーシステムの創造を巡る挑戦を紹介しつつも、マネーの3大機能と同様に、これらのシステム設計の本質は中世や近世から変わっておらず、それゆえ、自国の決済・通貨制度の歴史を学び、他国の制度に学ぶことは、金融システムの未来像を考えるうえで非常に有益であることも紹介されている。
02.齊藤論文「トークン化がもたらす金融システムの未来と軌跡」
セキュリティトークン、いわゆるデジタル証券の実用化とプラットフォーム展開において、日本が世界のトップグループに位置していることはもっと広く知られてしかるべきである。そのドライビングフォースとなっているのが、官民によるセキュリティトークン法制度の整備と、不動産セキュリティトークンを中心とした発行実績の拡大、Progmatをはじめとするプラットフォーム群の発展、およびセカンダリー市場創造に向けた大阪デジタルエクスチェンジの開設である。
齊藤論文は、Progmat Inc.の代表取締役であり、三菱UFJ信託銀行内のプロジェクトであった時代から中核的推進者であった齊藤達哉氏の手による解説論文である。Progmatが目指す金融システムの未来像が最新の企画・開発状況に基づいて解説されており、トークナイゼーションの一般概念や法規制とITシステムという両インフラの解説もなされている。トークン化ビジネスについて現場感をもち、その広い関連領域を展望する際のベスト・オブ・ベスト論文であるといえよう。
論文では、まず、日本においてトークン化ビジネスがどのように法制化されているのかを、セキュリティトークン、ステーブルコイン、暗号資産、ユーティリティトークンを対比することで解説している。次に、セキュリティトークンやステーブルコインはトークンが証券や預金といった実在資産に対する何らかの権利を表象しているものであり、RWA(Real World Asset)トークンの一類型であると整理している。そのうえで、①実在資産RWAとプラットフォーム基盤上のトークンをどのような法的構成で結びつけるか、および、②同基盤上のトークンの所有移転がRWAに対する権利の移転と整合的になるような法的構成の作り立て方が重要になることを指摘している。そして、信託法に基づく受益証券発行信託がこれを満たす有効な手段であり、Progmatは同スキームを活用したものであることが紹介されている。
有価証券の券面発行、振替制度、セキュリティトークンという3つの証券システムにおいて、各々証券台帳管理や決済がどのような制度・インフラにおいて実現されているかという解説は、トークン化ビジネスの実務を学ぶものにとって非常に有益である。同様に既存の電子マネーとステーブルコインの比較理解も各々の法律構成やマネーとしての機能に踏み込んで解説がなされており、情報や思考の整理に大変有益である。
本論文の白眉となるのは、伝統的な有価証券や銀行預金でなく敢えてセキュリティトークンやステーブルコインを活用することのメリットは何であるか、将来の発展可能性をどのような点に見出しているかの解説であろう。中央集権的ガバナンス構造を持つ金融インフラにおいて、なぜ従来型のデータベース技術ではなく分散型台帳技術を採用する必要があるのかという問いは、以前よりワイブロ問題(Why blockchain? 問題)と呼ばれてきた。ユースケースを考え続けてきた筆者ならではの視点や未来戦略が、Why ST?/Why SC? という問い立てへの回答として提示されている。
こうした理解を踏まえたうえで、セキュリティトークンとステーブルコインをProgmatという共通基盤の上で活用していくことのレバレッジ効果が、近未来の金融システムのグランドデザインとして展望されており、今後の発展方向が論文中で示されている。加えて、ProgmatをMUFGからスピンオフさせ、多くの金融機関やアライアンスパートナーが近未来の金融システムを共創していく基盤とすることを目指した経緯が述べられている。競争領域はもちろん存在するが、共創と競争を適切に線引きすることが新しい金融インフラ発展の鍵となることを訴えている。
論文の最後では、市場成長の初期の段階において不動産STが発行の中心となっている点が紹介されている。特定受益証券発行信託において申告分離課税の適用や特定口座利用が可能であること、また、REITのようなポートフォリオ型でなく、マンションやホテル、商業ビルといった判りやすい特定の不動産単位で投資できることが投資家の需要を引き付けていることが指摘されている。足元の課題となるのは、成長を牽引している不動産STが今後の市場環境の変化のなかにおいても順調に拡大を続けていくことや、そのための魅力ある商品の連続的提供と投資家層の育成であろう。同時に、他の実物資産にトークン化市場が拡大していく仕掛け作りや、STとSCが共通基盤の上で活用可能な点を具体的にどう活かしていくかが市場拡大の課題となろう。
03.水田論文「人工市場:金融市場のコンピュータ・シミュレーション」
マーケット・マイクロストラクチャーという研究分野がある。取引所取引や相対取引の市場制度を設計する際には、膨大な決まり事の策定が必要となる。例えば、売買のマッチング手法や価格決定の仕組み、取引相手方となる仲介ディーラーの有無(オーダー駆動型かディーラーによるクオート駆動型か)、価格や取引単位の刻み幅、ザラ場の連続オークションか板寄せのコールオークションか、サーキットブレイカーの設計と運用、取引情報の開示や配信法、オーダーフロー情報の管理、システムの情報処理速度、手数料ほか取引コスト、市場流動性と取引コストの関係、市場参加者の数や規模の偏り、直接・間接参加者の構成や参加資格・企業属性など、主要な案件だけでも多数に上る。こうした制度設計の作り込みや相違が、市場参加者の行動や価格決定・価格変動、市場流動性、効率的な価格発見など各種の市場機能にどのような影響を及ぼすかを研究する分野がマーケット・マイクロストラクチャー研究である。
より良い市場取引制度の模索は簡単ではない。既存の制度下で得られたデータしか利用できないため、制度変更がどのような影響を及ぼすのか、意図通りに良い変化を引き起こすのかは事前には不明なことが多い。理論的に支持されていたとしても本当にその通りになるのか、定量的にどれほどのものとなるかは不確実である。マーケティングのA/Bテストやランダム化比較試験のように、既存のものとは異なる制度や環境、商品を実際に適用してみることで情報を得ることも考えられるが、こうしたテスト的な手法が応用しにくいケースもある。まれに自然実験(意図せざる環境変化によって観察結果が得られ、これを実験結果であるかのように利用する手法)が偶然の産物として得られることもあるが、計画性や再現性がない。
こうした市場設計の困難さを克服する手法として、コンピュータープログラムの中に人工的な市場を作り、市場制度を変化させることで制度設計の影響を検証する手法が考えられている。水田論文は、金融市場のコンピュータ・シミュレーションとして人工市場を活用した研究をサーベイしたものであり、様々な研究事例や分析動機を例に取り上げて解説している。具体的には、バブルや金融危機の発生メカニズムや市場リターンの非正規性、呼び値の刻み幅がボラティリティに及ぼす影響、サーキットブレイカーの効果、注文付け合わせルールと価格変動、アルゴリズム取引の市場への影響、人工知能が意図せざる相場操縦を行ってしまう危険性、マクロ経済モデルへの適用などである。
論文では、まず、伝統的な経済学やファイナンス理論が金融市場や金融システムの複雑な挙動を上手く扱えないことの理由が考察されている。特に、市場の暴騰暴落のメカニズムの表現や、一部門のショックが様々な伝播経路で増幅され金融システム危機に拡大していくメカニズムの表現などが不得手である理由を指摘している。すなわち、複雑なものを理解するためのシンプル化という近似アプローチの限界である。また、平時においてこうしたアプローチが機能したことが伝統的モデルへの過信をもたらした点についても厳しく批判している。
経済学で利用される理論モデルは、分析視点(世界の捉え方)の見通しをよくし、均衡解の算出などモデルを数理的に扱いやすくするために、単純化を行っている。例えば登場する経済主体の数を減らし(家計や企業、政府)、行動原理をシンプルにし(効用最大化や利益・企業価値最大化)、経済主体の同質性を仮定する(代表的家計による近似)。また、ファイナンス理論、特に工学系ファイナンスにおいては、価格やボラティリティの動きによくフィットする確率過程モデルを見つけ出し、将来の価格変動もこれに従うと仮定する。これらの過程では、経済主体の異質性や限界合理性、取引や債権債務のネットワーク構造、市場制度やインフラが果たしている具体的な役割など、モデル上で扱いにくいものが捨象される。マーケット・マイクロストラクチャー分析を理論モデルで扱おうとすると、多くの外生環境を与件とした部分均衡モデルにならざるを得ない。そこでは、市場参加者間の相互作用のような一般均衡かつ動学的な観点は無視せざるを得ない。
筆者は、こうした限界を乗り越える有効な手法として、エージェント・ベースド・モデルを推奨している。分析したい市場の特徴を模した人工市場において多数のエージェントが売買を行うシミュレーション環境を用意し、価格変動や取引量、市場流動性等に影響する要因を実験的に検証していく手法である。個々のエージェントは単純な行動原理で動いているにもかかわらず、複雑系システムとしての金融市場の複雑な挙動を産み出すことができ、それゆえ、伝統的な経済学やファイナンス理論の限界を克服できるものと位置付けている。
そのうえで、分析の目的によって3つのタイプのエージェント・ベースド・モデルを使い分けることが重要であると指摘している。①生じている現象の背後にあるメカニズムを解明する、②実データにフィットする緻密なモデルで定量的な予測に役立てる、③両目的をともに狙うという3タイプである。論文の最後では、人工市場分析は研究者の参入が少なく、特に経済学やファイナンス理論の研究者からの注目度が低いこと(むしろ、他分野の研究者がエージェント・ベースド・モデルの利点を積極的に活用していること)を指摘し、今後の研究発展が期待されることを訴えている。ちなみに、解題筆者もエージェント・ベースド・シミュレーションで研究を行ったことがあるが、近年の生成AI技術の発展によりエージェントの振舞いのモデル化において広大な新領域が誕生しており、適用領域の拡大と分析の高度化が期待できる点に注目している。
04.木村論文「オルタナティブデータとしての不動産登記ビッグデータ」
より良い市場を創るためには、財の性質や価格に関する情報が広く利用可能となっていることが重要である。ミクロ経済学の一分野である情報の経済学で必ず言及されるのが、中古車市場いわゆるレモン市場の問題である。中古車は品質に関する情報が売り手と買い手の間で非対称である(売り手は中古車の品質をよく知っているが買い手は情報不足)。このため効率的な市場が形成されにくい。具体的には、売り手が質に応じた適正価格で売れなくなり、安くて品質の悪い中古車(レモン:皮が厚く切ってみないと品質が判らない)ばかりが流通することが指摘されている。
木村論文は、不動産登記情報が不動産という巨大市場の透明性や情報流通において、極めて重要な役割を果たしていること、さらには、その効率的で高度な活用が経済の活性化に重要であることを指摘し、具体的な活用事例を自社サービスとして提供されている実データで解説している。その応用事例を図表で眺めるだけでも極めて面白く、様々な活用事例が頭に浮かぶなど、筆者の主張を裏付けるものとなっている。
例えば、あるエリア内での所有権移転売買の動きをみると、その地域での不動産市場の活発さや相場観、大手デベロッパーによる大規模開発の予兆発見、不動産タイプや価格帯別の需要分析、将来価格予測や投資リターンの評価などが可能になると指摘している。図表ではJR渋谷駅東側エリアでの売買発生ポイントと推定売買金額が示されている。タワーマンションの不動産登記情報からは外国人の所有状況を調べることができ、積み上げアプローチによる国際的な不動産投資資金の流れもマクロ・ミクロの両面で捕捉可能になるとしている。また、国内富裕層ビジネスに有益な情報も一括して効率的に入手することができるとしている。例えば、シンガポール在住の国内不動産保有者上位リスト(法人/個人別や国籍も氏名情報から推測可能)を作成し、そのうちの一人がニセコ領域に複数の物件を所有していることを事例として示している。
こうした不動産登記情報の活用においては、新技術との組み合わせが重要となる点が指摘されている。GIS(Geographic Information System、地理情報システム)技術によって物件の位置、特性、価値などを地図上に表示することで、地域ごとの不動産市場の動向や価格変動を直感的に把握することができる。そうした例が多くの図表で示されている。また、GPSとの連携により、不動産登記情報の利用シーンも拡大していることを紹介している。例えば、金融機関の法人・個人の営業担当者は、街中で目にした物件についてその場でスマートフォンにより登記情報をSNS画面を通じて瞬時に取得することが可能となった。登記所に出向く必要がないうえに、地域ごとに分断された登記所の情報を横断的に活用できる点も魅力的である。物件や所有者に関連した情報(他の所有物件や抵当権者)は国内に広く分散していることに鑑みても、デジタル化の恩恵は大きい。
不動産登記情報を他のデータと掛け合わせることで利用価値が加速度的に高まる点も指摘している。企業信用調査会社と連携することで信用情報中に企業所有の不動産物件を含めることができる。当該不動産の各種情報が入手可能であるため、企業財務の健全性や担保価値、抵当権設定状況を含む信用度の評価が可能となる。ビジネス提案を行う場合の解像度を上げることにもつながろう。
論文タイトルにあるとおり、不動産登記情報はビッグデータでありオルタナティブデータである。これをデジタルデータベース化することにより、人と不動産の動きを多角的に捉える新技術として提供することが可能になっている。論文中ではその一部事例が紹介されたにすぎず、ビジネス動機をもったユーザーが活用することにより、不動産市場の活性化や効率化、ひいては社会経済の発展のための貴重なインフラになる潜在力を秘めている。
そうした可能性を十分に引き出すためにも、筆者は不動産登記情報のオープン性を維持することの重要性を最後に指摘している。個人情報保護法が目指す「個人の権利や利益の保護」とのバランスにかかわる論点である。登記情報には個人情報が含まれるという前提のもとで、どのように個人の権利や利益を保護するかという議論はすでに官民で展開されてきた。こうした議論を踏まえず、かつ、不動産登記情報が公共財として社会経済活動を支えている事実に対する目配りが足りないままで、個人情報保護の観点のみから利用規制をかけようという議論が一部にあることに対し、筆者は強い懸念を示している。不動産登記情報やその社会的価値に関する深い理解を前提としたうえで、個人情報保護と情報活用にかかる利点とリスクを高い洞察力をもって議論していく必要があろう。これはデジタル社会のビジネスや社会インフラの制度設計に共通した課題となっている。