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2022年6月9日 コラム

コラム:欧米では、個人(家計)の約1割が暗号資産を保有

欧州(EU)・米国の各中央銀行は、20225月に個人(家計)の暗号資産の保有状況に関する調査結果を初めて公表した。

欧州中央銀行(ECB)は、202111月に、ベルギー、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、スペインの6か国で調査を実施。暗号資産を保有する家計は6か国の平均で全体の10%(最高:オランダ約14%、最低:フランス約6%)で、全体の3分の266%)は保有額が5,000ユーロ(約70万円)未満であった。また、所得階層別には、最も所得の高い層での保有割合が最も高く、次位の高所得階層がこれに次いだが、最も低い所得階層での保有割合が、中位の所得階層を上回る「U字型」となった

図表1 Surveys point to material household holdings of crypto-assets in large euro area countries

出所:Financial Stability Review (europa.eu)

米国の中央銀行(連邦準備銀行:FRB)は20211011月に調査を実施。暗号資産を保有または使用したことがある個人は全体の12%で、そのうちの11%は投資目的で保有、2%は過去12か月以内に何らかの購入代金の支払いの目的(取引目的)で使用、1%は家族や友人への送金に使用していた。投資目的で保有する人たちは、年収が10万ドル(約1,300万円)以上の人が46%を占めるなど所得が高く、99%が銀行口座を保有しているほか、別途、退職後に備えた貯蓄をしている人が89%を占めていた。一方、取引目的で暗号資産を使用した人たちは、年収5万ドル(約650万円)未満の人が6割を占めるなど比較的所得が低く、13%の人が銀行口座を持っていないほか、27%の人がクレジットカードを利用していないなど、取引目的で暗号資産を使用しない人たちの平均値(それぞれ6%、17%)を上回っていた。

図表2 Figure A. Share without a bank account, credit card, or retirement savings (by cryptocurrency use)

出所:The Fed - Report on the Economic Well-Being of U.S. Households in 2021 - May 2022 (federalreserve.gov)

ECBは、欧州委員会が2020年9月に提出した暗号資産規制法案が立法者の賛同を今なお得られていない(審議中である)など規制・監督体制の整備に時間を要している中で、暗号資産の市場規模が急拡大していることから、先行き暗号資産市場の混乱が金融システム全体に波及するリスクを懸念している。FRBは、個人(家計)に対する金融サービスの普及状況(金融包摂:financial inclusion)の観点から分析を行っている。

(研究主幹 杉浦 俊彦)